甲源一刀流 資料館 外観 |
甲源一刀流顕彰会 会長 大久保典雄
甲源一刀流並びに甲源一刀流顕彰会について、その要旨と概略を申し上げます。
甲源一刀流顕彰会は、古武道「甲源一刀流」の顕彰と発展充実を目的として、本会の趣旨に賛同する会員によって結成された民間団体です。
甲源一刀流は、江戸時代中期に流祖逸見太四郎源義年に依って創始された剣術流派で、甲源一刀流の「甲源」とは、流祖の逸見氏が、甲斐源氏の一族であったことからとった流派名です。
逸見氏の先祖は、戦国時代(1500年代)に甲斐国(現山梨県)から一族で秩父郡小鹿野町(旧両神村)小沢口に移り、住居を構えたことから始まります。以来、宗家歴代の当主は農耕に従事しつつ、開祖からの剣術の道統を連綿として伝え、一時期には秩父を中心に北武蔵から西部の山沿い地方一帯にまで栄え、門弟3千余人といわれていました。宗家逸見家の現当主は、剣世第十代逸見義清氏です。
歴代当主は、厳しい修行に励み、剣豪として名声を博しました。また流派の門弟からは、幾多の高弟や名剣士を輩出しています。詳しくは、他の参考書籍や研究物等に譲りますが、この流派を全国的に有名にした事例の一つに、中里介山の小説「大菩薩峠」が挙げられます。(第一巻は「甲源一刀流の巻」です。)この小説は映画化され、大変話題に成りました。
さて、本会は、甲源一刀流の顕彰と発展を期して発足したが、これ迄には幾つかの変遷があり、現在に至ります。
本会「甲源一刀流顕彰会」の名称を初めて使用した文書は、昭和37年(1962年)8月6日発出のものが、現存しています。
この文書に依れば、甲源一刀流顕彰会会長・両神村長である加藤博康氏(村長在職・昭和26年4月30日~昭和38年4月1日。後に秩父市長)が、「甲源一刀流顕彰武道大会開催について」で、広く武道大会への参観を呼びかけています。加藤博康村長の在職年代等から推測するに、現在の本会の名称は、昭和30年頃から既に使用されていたのではないか、と思われます。
この頃の顕彰会は、組織や規約はなく、村長が会長職で、村の教育委員会職員一名程度が、事務所員に任命されて、必要に応じて村予算を付けて、活動していたようです。以来この方式(歴代村長が会長で、事務所員1名程)は平成15年(2003年)8月迄続きます。
平成15年7月に、「体育振興を語る会」(発起人代表・中西秀夫両神村体育協会会長)が開催され、両神村並びに村教育委員会・村議会等の関係者によって、顕彰会の見直しが図られる事に成りました。見直し作業は、顕彰会規約・役員選出・事業内用・予算・会費等々、広範囲に及びました。平成15年8月に顕彰会総会が開催され、千島一朗会長(村長)が議長と成り、規約・事業内容・予算・会費・会員等の議事を審議して承認されました。この後、新役員を協議決定しました。この様な経緯のもと平成15年8月7日、新生「甲源一刀流顕彰会」は、スタートしました。
出発時の役員は、会長千島一朗氏・副会長に中西秀夫氏と鈴木和夫氏・理事10名・監事2名、会員80名程でした。尚、事務所は両神村教育委員会内に置かれました。このほか特別職として、顧問に宗家当主である剣世第九代逸見知夫治氏、参与に元村長元会長の近藤恵一氏と山中倉次郎氏が選出されました。
平成15年12月20日(土)、記念すべき第1回甲源一刀流顕彰剣道大会が、大勢の剣士(小学生から一般まで)の参加を得て、盛大に開催されました。(会場・両神村立両神中学校体育館) この後、町村合併(両神村は平成17年10月に小鹿野町と合併)があり、新小鹿野町が発足しました。町村合併に伴い、本会の会長千島一朗氏は、村長職が解かれ、会長職に専念することに成りました。事務所も小鹿野町教育委員会社会教育課内に代わりました。平成15年以降の会長は、初代が千島一朗氏、2代鈴木和夫氏(2年間)、3代中西秀夫氏(8年間)の各氏が歴任し、令和3年(2021年)度から現在会長は大久保典雄が勤めています。
近年、全国的に少子化が顕著で、スポーツ人口に於いてもその傾向があります。当町においても少年剣士の人数が急減し、本会主催の剣道大会の開催が出来ずにいます。これは大変困った問題です。
幸い本会では、剣道大会に代わって「剣道交流会」が、行われています。
この交流会は、宗家当主剣世第十代逸見義清氏のご指導とご支援により、開催されるものです。
交流会は、小鹿野町武道場を会場に、宗家当主自らが、受講希望の剣道有段者等を対象にして、甲源一刀流の基本形を中心に指導します。参加剣士は、「剣術は心術なり」を修行の目途とする流祖の教えを心に刻み、秘伝の技を習得すべく、稽古に励みます。剣世第十代逸見義清氏から直接学ぶことが出来るこの交流会は、全国的に見ても大変珍しく貴重な場と成っています。
甲源一刀流顕彰会は、会員相互の和を大切にしつつ、本会の目的遂行達成の為に、これからもより一層精進して参ります。皆様方の温かいご支援とご協力を賜りますよう、お願いいたします。
記・令和4年(2022年)1月吉日